展覧会アーカイブス 2022

回帰する時間 〜繋がる〜
room1




作家紹介
- いまふく ふみよ
掲載紙
-
過去から未来へ 色彩の美運ぶ舟
鮮やかな黄色と紫、華やかなピンクに赤、深い藍色、光沢のあるグレー、若草色。色とりどりの舟がギャラリー空間を通り抜けていく。舳(へ)先を2色に塗り分けた舟は、植物染料で染めたとは思えないほどの鮮やかさを放つ。染料は、紫根、ざくろ、くちなし、槐(えんじゅ)、蘇芳(すおう)、藍など古来より用いられてきた植物の花実や根、葉や木片だ。裏側に回ると、ビビッドなピンクに目を奪われる。紅花で染めた色だ。
植物染料を用いてインスタレーションを制作する作家のいまふくふみよは、古代紫根染の再現に取り組む研究者の顔も持つ。考古学や歴史学の専門家と協働し、古代日本において最も高貴な色とされた紫を、原種の栽培実験、平安期の文献や木簡など史料の検討、染色実験を通して再現を試みた。その成果を活(い)かした本展では、「舟」の形に象徴性が託されている。
古代、染色技術や天然染料は、舟に乗って大陸より伝えられた。「舟」は、異なる文化や植生をつなぎ、豊かな交流を生むメタファーだ。同時にそれは、途絶えていた技術を復元し、過去から未来へと運ぶ「舟」でもある。
近年に化学染料が開発されるまで、衣服や布製品は天然染料で染められていた。私たちは地味で渋くくすんだ色を想像しがちだが、退色する前の本来はもっと鮮やかな色だったのではないか。過去へと想起を運び、世界が美しい色彩に満ちていることに目を向けさせるいまふくの「舟」。それは同時に、環境負荷の軽減と美しさの追求は両立しうること、そして加速する「異質な他者や異物の排除」に対して問い直すべきことを静かに示している。(高嶋慈・美術批評)京都新聞 2022年3月19日

展覧会備考
−