展覧会アーカイブス 2019

Made in France
room1




作家紹介
- 北岡 知子
- Fleur De Kookyse
掲載紙
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妖怪、メイドインフランス
フランスでは、昨今ちょっとした妖怪ブームらしい。去年はケ・ブランリー美術館で「アジアの妖怪と幽霊」展が、そして今年は、エルプ美術館で「妖怪、漫画とムラカミ」展が開催中だ。
パリで制作する染色作家・北岡知子と、フランス人刺繍(ししゅう)作家フルール・ドゥ・クーキィズのコラボレーションのテーマは「妖怪と現代」。北岡が浮世絵を写して染めた風景の上に、刺繍の百鬼夜行と新幹線が走っている。絹と綿の糸で火の妖怪を刺した布を、アカネとキンモクセイで赤、黄色に染め分けた作品は、2種の糸が染まり方の違いで妖怪が立体的に浮かび上がる。技法や絵の面白さに加え、日本とフランスの妖怪観の違いがエキセントリックなイメージも描く。北岡が染めた幽霊のシルエットに、フルールは「形が似てるから」と、エビの刺繍を添え、幽霊の傍らの洗濯物としてレースを貼り付け、なぜか洗濯ひもは逆に巻いたしめ縄。シュールだ。
北岡の用いる染色技法は、インドネシア、マレーシアで伝統的なろうけつ染め、バティック。フランスでは作る人も少なく、自然染料の入手も難しい。薬草店で探すほか、バイオリンの弓材・ブラジルボクの木くずも煮出して使っている。この木は、なまめかしいピンクに発色する。
フルールが北岡を「煮物の妖怪」として描いた作品がある。草木を煮出す染めの工程が怪しげに見えるのだろう。ロウの細い線を密集させ、白く染め抜くことで図に発展させた北岡の藍染め作品は、染色に詳しい日本人ならば、友禅の糸目を文様に生かす作家を思い出すかもしれない。しかし、染色の手わざ自体が珍しい現代フランス人の目には、どう映るだろう。妖怪はいきものとモノ、人間と動物や亡者の間にあるような存在。その魅力である“怪しさ”は、人の不安、不思議な気分が一人歩きしたものだ。「線は生き物」と言い、フリーハンドで有機的な文様をあらわし染める北岡とその作品は、まるで妖怪のように不思議なものに見えるかもしれない。(沢田眉香子・著述業)京都新聞 2019年4月13日

展覧会備考
フランス人刺繍作家とのコラボ