展覧会アーカイブス 2018

素材を考えるシリーズ #1麻
room1




作家紹介
- 野村 久之
- ひろい のぶこ
- ギャラリー啓
- 株式会社井筒装束店
掲載紙
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名もない織地に美を見出す眼
染織アートやインスタレーション作品を主に展示する「ギャラリーギャラリー」で開催中の「テキスタイルの素材を考えるシリーズ」第1回は「麻」。風通し良く、夏に快適な着物や服の素材、麻。歴史は古く、縄文時代の遺跡からも麻の繊維が発掘されているそうだ。綿の普及以前、庶民の衣類は麻が中心。麻袋や麻縄などは必需品だった。しかし戦後、大麻取締法によって繊維用の麻の栽培が厳しくなり、大麻はほとんど作られなくなった。
麻には魔よけの力もあるとされ、神事の道具にも欠かせない。神社でお参りする時に鈴を鳴らす縄「鈴緒(すずのお)」が展示されている。新品を見る機会は珍しいが、大麻の繊維のすがすがしい白さ、それを太くよった姿には神々しさがみなぎる。
古い自然布を扱う店「ギャラリー啓」は。「オクソザックリ」と呼ばれる麻の仕事着を出品した。麻糸の製造工程で出たクズをかき集めて織らせた布だが、わずかな繊維も無駄にしない作り手の知恵、大事に受け継いだ名もない庶民、荒く不均一な織地に美を見いだした現代の眼が、この麻布にオブジェと呼ぶにふさわしい存在感を与えている。潔さ、力強さ、清らかさ、そして自然の風合い。さまざまなボキャブラリーを引き出しうる麻という素材の底力を眼にすると、そこに並んでいる野村久之、ひろいのぶこの作品が、麻の風合いをどう生かしているのかが見えてくる。
染織は、素材と染料の組み合わせ。そこにはまだまだ多くの可能性があるはず。しかし作り手も観客も、表現手法の目新しさばかりに気を取られ、素材という原点を見過ごしていないだろうか?「素材を考えるシリーズ」は、若い作家たちに、そのことを発信する意図もあるようだ。絹、紙、ウールも順次、取り上げる。(沢田眉香子・著述業)京都新聞 2018年7月21日

展覧会備考
企画原案:深萱真穂