展覧会アーカイブス 1993

小林尚美展
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作家紹介
- 小林 尚美
掲載紙
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まるで重力のない世界
染織の枠を超えたファイバーワーク(繊維造形)で20年近く国際的に活躍してきた小林尚美が、ファイバーも超えてしまったような空間造形を発表している。13日まで京都市ギャラリーギャラリー(075-341-1501)で。日曜は電話連絡が必要。
宇宙空間だろうか、ここは?。作品が目に入ってきた瞬間、そんな錯覚に引き込まれても不思議ではない。大きな輪が宙に浮いたまま静止している。二つの白い輪はとりわけ夢幻的だ。厚みがあることは分かるのに、重さが消滅してしまった感じ。
和紙をより合わせた「こより」で骨組みを作り、大小の切り紙をリズミカルにはった。直径2メートル前後。実は透明な糸で吊してあるのだが、それに気付いてもなお夢のような浮遊感は消えない。もう一つの真っ赤な輪は鮮烈な存在で目を見張らせ、やがて綿の柔らかい風合いで心を和ませる。朝日新聞夕刊 1993年5月8日
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永遠に終わりのない円に興味
あすまで下京で個展 ファイバーアーチスト 小林尚美さん
繊維をつかう造形美術(ファイバーワーク)の作家、小林尚美さん(47)=京北町=の個展が、下京区のギャラリー・ギャラリーで13日まで開催中。
東京都心部で生まれ育ち、武蔵野美術大で染織を学んだ。卒業後、デザインから実際のものづくりまで一貫して行うところに、と川島織物に就職、京都に。夫の正和さんとは同社で出会った。美術大学の同期生でやはり同社に就職した草間喆雄さん=宇治市=と正和さん、尚美さんの3人で、京都で初めてのファイバーワークのグループ展を開いたのが1971年。3人ともその後、国内外のコンクールで受賞を重ねるなどし、今はそろって日本を代表するファイバーアーチストとして知られる。
約10年前、京北町に家を移した。それまでの、糸を階段状に積み重ねたボリュームのある作品に加え、糸や和紙を使った円形の連作を造り始めるのがこのころから。「時間とともに巡り、繰り返す周辺の自然をながめているうちに、永遠に終わりがなくまわっていく円のかたちに興味を持つようになりました」
今回の展示でも、和紙のこよりをつないで作られた直径約2メートルのサークルが、極細のてぐす糸8本で床から約1メートルにつり上げられ、まるで宙にふわりと浮き上がっているような錯覚に捕らわれる。さらにその横に、赤く染めた糸の固まりでできた直径約2.5メートルの輪を、ヤマツツジの枝でできた短い足が支えた作品が。題して「コスミック(宇宙の)・リング」。ふわふわとした感触と集積したもの、和紙の白と糸の赤?両者の対比がおもしろい。
「プラス、マイナスでゼロになる対比の表現が、私にとって無理のないもの。二つの間に避有空気を感じてていただければ」毎日新聞 1993年5月12日
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ファイバーワーク(繊維造形)の分野でみずみずしい造形美を生み出し続ける小林尚美が、地元京都では久しぶりの個展を開いている。2室を使った発表は、繊維という素材がもつ親近感にも似た温かさで見るものを優しく誘い、さわやかな心地にひたらせてくれる。
コスミック・リング。直訳すれば「宇宙の輪」という意味になる近年の円環造形の延長線上にある新作が、ある場合には宙づりにされて空間に浮かび、ある作品の場合は、木の枝の小さな三脚に支えられて床からわずかに浮いて静止している。
優美な円環造形は2つの種類がある。ひとつは、独自の手法で型抜きした、こより糸のカーブのある角柱造形を連続させてつくり、もうひとつは、木綿糸をゆるく撚(よ)ったヒモ状の糸束を円環状に積層させて生み出している。
2つの円環は、白と深紅の色彩の対比に加えて、すき間のある造形と、集積された形という疎密の対照的な成り立ちがすがすがしい。
繊維素材とかかわる感性の良さが、円環という一種の宇宙感覚響く明快な造形に美しく解き放たれている。繊維造形ならではのしなやかな軽さと、造形的な強さとが調和したたおやかな気品が、空間にただよう。(O)京都新聞 1993年5月8日
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小林尚美展
1993年4/30-5/13 京都・ギャラリーギャラリー
画廊空間に二つの円環がある。一つは、中空に浮かび、一つは地表近くに支えられる。中空の円環は紙縒り(こより)と和紙で制作されたもの。もう一つの円環は真紅の繊維束で形づくられている。深閑として浮かぶ中空と、静かな存在感を主張する地表二つの円環の対比に、見る人は思い思いのメタファーを読み込むことが可能だ。作品を前に佇むと、無限の空間と時間の只中に存在することの不思議さが静かに迫ってくる。国際的に活躍する作者が宇宙へとつながる表現展開を見せた。『染織α』1993年7月号No.148

展覧会備考
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