展覧会アーカイブス 1988

JUN MITSUHASHI EXHIBITION
room1/2





作家紹介
- 三橋 遵
掲載紙
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画廊空間に浮遊するボートとオール。別室ではプールに飛び込もうとする男のシーン…。三橋遵の個展会場は、早くも遊び心を誘う真夏の訪れだ。
ボートといっても、黄色と藍色に染め分けた綿布を、長さ5メートルほどに幾重にも折り重ねて両端から引っ張っただけの仕掛け。木の棒、竹ヒゴ、ナイロン網で作った2本のオールが両サイドに浮遊していなければ、ボートのイメージはわきにくい色布のありよう。日本人の感性というより、この作家特有のみずみずしい素材とのかかわりから生まれた、かわいい“布のインスタレーション(仮設的装置)”とでもいうべきか。
プールの情景にしても、一枚のアルミ板を人がたに切り抜いて赤と緑に色分けし、波うつ水面は園芸用のナイロン網にカラフルな不織布片を多数貼(は)りつけただけ…。具象的なイメージは強引に押しつけるわけでもなく、素材は素材としての表情を少しも失わずに、日常の情景をほうふつさせるしなやかさが、ほのぼのとした装置づくりを生み出す。(F)京都新聞 1988年5月14日
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三橋 遵個展
1988年5/7-5/20 京都・ギャラリーギャラリー
布の特性を生かし、折り返しやたるみで具象的な形態に近づけ、そこに一種のユーモラスな局面を見せる作者独自の表現。黄色とブルーの二枚の綿布を縫い合わせ、等間隔で折り返していく。床に敷いた時は一枚の変哲もない布も、二枚重ね合わせ吊り下げると左右対称のふくらみのある曲線を描く。その形がボートのように中空に浮かぶが、凝った細かい技術を排除した単純な操作に改めて布の持つ特性を見せている。『染織α』1988年7月号No.88
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三橋さんの前回2回のギャラリーギャラリーでの個展もあそび心のある楽しい作品展でした。それは、ビリヤードを思いおこさせるものであったり、卓球台のようであったり、具体的なものを思いおこさせる中にも、作家独特の持ち味が、ピリッとでている作品展でした。今回のギャラリーギャラリーの個展もその延長上にありながらも、今後の三橋さんの作品展開も見られるような甘口の中にも、少し辛みのきいた展覧会になったような気がしました。それは、布とのかかわりあいの中で、新しい素材への挑戦もあって、なかなか楽しいものでした。
第1室は、具体的に、とびこむ人をかたちどったアルミ板の下に、市販のネットを空中に、浮かしプールや海辺の状況をえがいているような作品展開でした。ネットの糸の上に、三橋さん独特の色のカラフルな不織布がちらばり、それがあたかも、波しぶきや、水面の光りを描いているようでした。特に、初夏の強い日差しが入った日には、ぎらぎらとした太陽の下の健康的な水辺のイメージが、うかびあがり、すがすがしい気持ちをさそってくれたような気がしました。第2室は、布の端から不織布のカラフルなチップが、見えかくれしている布を何重にも、重ね、空中に浮かすことによって、得られる布のたるみをうまく見せた作品展でした。黄色と紺色に染められた布は、端2点で、つられ、布の自然なたるみの効果をえられて、緩やかな放物線を描いて、実際には、かなりの重量がある布が、軽やかに浮かびあがっていました。両サイドに、木とあみで作られたオールをそわせ、ボートを思い浮かばせます。そして、床には、これも、市販のあみに、不織布のチップをはったものを、ランダムに切り、立体的に組まれた小さなオブジェが、これもまた、軽やかに床に、ばらまかれています。これは、少し暗い部屋に、部分的な光の効果を、与え、あたかも、水面が、きらきらと輝いているような錯覚を見せてくれました。
この軽やかなインスタレーションは、鑑賞者に、その空間に、入りこんでまるで、宇宙遊泳や、水中で泳いでいるような不思議な体験をさせてくれたように、思います。三橋さんの持っているすばらしい色彩感覚と素材とが、うまくとけあった作品展では、なかったでしょうか。布から出発し、染めという行為を通して、そしてまた、素材のもつ個々のすなおな性質を、押しまげるでもなく、押しつけるでもなく、ファイバーアートという領域をも越える新しい展開が、この作家から、期待できるように思っています。ギャラリーギャラリー 川嶋 啓子

展覧会備考
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