展覧会アーカイブス 1988

小名木 陽一展
room1/2


作家紹介
- 小名木 陽一
掲載紙
-
ファイバーワーク(繊維造形)の二人に注目した。
一人は織り行為にこだわり続ける小名木陽一。ナマリ板を張ったカーブ状のある台の上表面に、黄色い織り布がピッタリとなじんで広がる。台がカーブしている部分だけ、敷きつめられた織り布の色も黄から深紅へと変貌(ぼう)していく。別室では、横に置かれたゆるやかなスロープ状の台に、これも黄色の織り布が親和し、布の先端だけが深紅に変貌。連続する一本の横糸を、部分的に浸け染めすることによって生まれた色糸効果。カスリ織りとは技法も意識も違う。この作家独自の世界だ。(F)京都新聞 1988年4月16日
-
小名木さんの作品の技法は、綴れ織りのかすりです。こういってしまうと、何だか伝統工芸の世界を思いうかべてしまうのですが、小名木さんのその作品からは、どこにも、いわゆるその伝統工芸くささは、みあたりません。むしろ、超現代的だといえると思います。かすりにしても綴れにしても、どちらかというと、その技法のすごさ、手の細かさが目についてしまって、その奥にある作品の持っている味が伝わって来ないところがなきにしもあらずなのですが、小名木さんの作品群には、その技術的なものよりも、まずこの作品の持っている味というのが、伝わってくるように思います。それは、第1室、第2室ともにおかれた、作品のあのあでやかな、黄色から赤へのグラデーションです。まるで、見ている私たちに、希望を、わきたたせてくれるような、明るい楽しい気持ちにさせてくれます。が、それが、決してはしゃぎすぎでないのは、その技法による重厚さにもまして、1枚の織られたあでやかな色の布が、なまり板をはりめぐらされた台の上に乗せられているという形態を持っているからではないでしょうか。なまりの持つにぶく光った高さ30cmの台は、色が発散してどこかに飛んでいってしまいそうな作品の危険性を、ぐっとひきしめてくれているように思います。そして、私個人は、どちらかというと、するどい鋭利的な表現をした攻撃的な作品は、自分自身をせめられているようで、あまり好きではないのですが、小名木さんの作品は、今回、ウールで織られた布が、ゆるやかなカーブをえがいた台の上にのっているもので、見ている私たちに、ゆったりとした優雅なひとときを、もたらしてくれるようです。それにしてもあの小名木さんの独特の色は、決してねむりをさそうようなものではありません。どちらかというと、インパクトの強いものです。その色の強さにあっとうされてしまいがちなのですが、そうでなくむしろ、暖かさのあるのは、やはり、糸というやわらかな素材で、その色を表現しているからではないでしょうか。そこに、ファイバーワークとよばれる繊維を1つの絵の具とした表現方法と空間構成のおもしろさ、独特の芸術性があるところではないかと、今回、改めて思いなおしたのでした。
帰り際の階段や踊り場、部屋の照明の消された日の暮れかけに、ガラス越しに見える白い空間に囲まれた小名木さんの作品は、誰もいない5階の静かな古い建物から、美しい光を、放っているようで、それはまるで、地上の人々に希望の光を与えているような不思議な世界をかいま見たのでした。ギャラリーギャラリー 川嶋 啓子

展覧会備考
−