展覧会アーカイブス 1988

サーカスの家
room1/2

作家紹介
- 森 豪男
掲載紙
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東京・保谷市在住の森豪男は、薄いアルミ板を自在な形に切り取り、紫や緑、黒、白のアクリル絵の具で彩色、白糸で宙吊(づ)りしている。「サーカスの家」と銘うった画廊空間には、造形誇りを少しも感じさせぬ色彩オブジェが自由に浮遊し、忘れかけていた童心を呼びさましてくれる。(F)
京都新聞 1988年3月5日
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森豪男展 サーカスの家
1988年2/29-3/11 京都・ギャラリーギャラリー
玩具を思わせる、いくつかの原色に近い配色の小さな木製の物体が、空間の中空に静止していたり、壁に留まっていたりする。それは、糸によって吊られているのだが、糸は物体を浮かせること以上の過剰な意味はない。むしろ、しばらくすると糸の存在は意識から消えてしまう。会場に佇んでいると、時間感覚と空間感覚が揺らぎを起こしそうな、そんな奇妙な磁場が支配する、不思議体験の楽しいインスタレーションだ。もう一室のガラス越しの部屋では、白一色の空間に白い木と黒い針金で造形された物体が二つ、床近くに宇宙ステーションのように浮いている。『染織α』1988年5月号No.86
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森さんは、それをとり囲む空間をいつも意識されて、作品を作っておられる作家です。
それは、時には居住空間であったり、海辺のような野外であったり、素材も布であったり木材であったりします。そして、それはある種の物語性をも感じさせてくれます。
今回のギャラリーギャラリーでの作品展もギャラリーの空間を意識する作品展でした。第1室は、針金で作られた気球のようなものがとりつけられ、白く塗られたアルミ板が、ギャラリーにはりめぐらされた糸の上に、1つは目の高さより少し低い位置に、もう1つは、床ぎりぎりの高さに浮かんでいました。その2つのものは、決して大きくないほんとうに小さなオブジェなのですが、はりめぐらされた糸や高さをも含み、空間全体が、目に入ってきます。優雅に大小の気球が、なかよくつかず離れずゆらゆらと旅行をしている気分をあじわさせてくれる空間でした。第2室は、同じくアルミ板を自由自在に、切って組み合わせてそれに、紫や緑や黒にペイントされた立体物が、ここもまたギャラリーにはりめぐらされた糸の上にバランスよく浮かんでいました。それは、「サーカスの家」と題つけられたようにある物は、綱渡りであったり、ある物は、空中ブランコを思わせたり、何かそういうある種の特異な空間にまぎれこんだような気さえしました。サーカスのあのざわめきや歌声が聞こえてきそうな空間でありました。そしてまた、ギャラリーが終わった後、よなよなあのオブジェ達が楽しくサーカスの宴をしているような、朝、ギャラリーの扉をあけた瞬間にあわててもとの位置にもどったような、そのあらい息づかいが、聞こえてきそうな気さえさせてくれます。それにもまして、サーカスが、1時的でジプシー的などこかわびしさを感じさせるように、その空間は、また1種のにぎやかさの余韻をのこしながらも静けさのある空間でもありました。
森さんのオブジェ自体は、本当にそんなに大きなものではありません。手のひらにのせることの出来るようなものもありました。そんな小さなオブジェ達が、ギャラリーの全体の空間を意識せざるをえない作品展を展開してくれました。巨大化した作品が、画廊空間をうめることの多い今日にあって、森さんの作品展は、大きいばかりがすべてを見せるものではないというようなことを特に若い人たちに、教えてくれたような気がしています。
今はやりのインスタレーションとはどこか一線をおいたような静かで、重みのある完成された空間構成ではなかったでしょうか。ギャラリーギャラリー 川嶋 啓子

展覧会備考
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